お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 過密なスケジュールを次々とこなす彼が朝のコーヒータイムに見せるリラックスした姿をもう自分は見ることできないのだろう。
 真帆にはそれがただひたすら寂しかった。
 あのキスが、あの彼の問いかけが、二人の間にあった良い感情を全て吹き飛ばしてしまった。
 一方で、あのキスの意味はいくら考えてもわからないままだった。
 真帆に恋人がいることを詰り、罰するように唇を奪う。
 その行動だけを見れば、まるで彼が自分に好意を抱いているようだと真帆の中の恋心が言う。けれど結婚間近の恋人がいるのにそんなことがあるはずがないともう一人の自分がそれを諫めた。
 あのキスに、ほんのわずかでも蓮の気持ちがあったとしてもそれは所詮、気の迷いでしかないのだと。
 どちらにせよ。
 もはや彼の瞳に真帆は映ってはいない。あの日のことを忘れてしまったように見える彼は、一時の気の迷いで真帆に口づけてしまったことを後悔しているのかもしれない。
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