お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 2度目のキスは少ししょっぱい涙の味がした。
 見た目よりも柔らかい蓮の唇が真帆を食むように触れる。ふんわりと真帆を包む大きな蓮の腕に身を預けて真帆はそれをとても心地よく感じた。
 数日前に交わしたキスは、無理矢理真帆を溶かしてやろうという熱を感じて恐ろしさに震えたけれど、今日のキスは180度違って思えた。確かめるように、いたわるように、慈しむように真帆に触れるその唇を、なぜか真帆は少しもどかしく感じた。
 あの熱が欲しいと真帆の中の何かが言った。
 もっともっと、溶かしてほしい。
 触れてほしい。
 そう思った真帆の唇が無意識のうちに、何かを催促するようにわずかに開く。そこへ蓮がすかさず侵入した。
 途端に、甘くて頭の中をふわふわとさせる何かが真帆の口いっぱいに広がった。マシュマロみたいな柔らかいものが真帆の中を余すことなく丁寧に触れてゆくのに、脳が溶けそうなほどの悦びを感じた。
 ずっとずっとこうしていたい、どきどきと波打つ真帆の胸がそう願う。手が届かないはずの人に触れられるこの瞬間を"永遠"にできるのならば何を引き換えにしてもかまわない…。
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