お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
『真帆ちゃんのお相手の藤堂さんはしっかりした方だから昨日言ったように交際は賛成だけれど、結婚することになったらどうしましょう…お母さん、お母さんの縁談のねお相手の方…藤堂和正さんっておしゃるんだけれど』

 小夜子はここで一旦言葉を切って、ため息をついた。そして一段低い声で続けた。

『お母さんあの方苦手なのよ…本当に。結婚となったら、無関係ではいられないでしょう?』

え、と声を漏らして絶句する真帆の視線の先には和正の満面の笑顔があった。

『真帆ちゃんの会社の社長さんなんでしょう?立派な方なのは確かだけれと…、猪突猛進というか、人の話を聞かないというか…パーティなんかでお会いした時は一度お話したら、なかなか離していただけなくてとても困ったわ。縁談が進んでるって聞いた時は困ったなって思ったものよ。もちろん、悪い方ではないんだけど』

真帆は小夜子が人を悪く言うところをあまり見たことがないから、若い母はよほど困ったのだろう。
 
『でもまだお付き合いすることになったばかりだものね、気が早いわよね?それにもちろん、…もちろん本当にそうなったらお母さんも頑張るから。真帆ちゃんは心配しなくていいのよ?…でもまだ今は真帆ちゃんがお母さんの娘だってことは先方には内緒にしててね?』

…結局、真帆ははっきりとは何も言えないままとにかく話は帰ってからということにして電話を切った。

「いやぁ、楽しみだなぁ」

と、上機嫌の和正の目も見られなかった。
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