お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
総務課を出て社食へ向かう途中も真帆はもやもやとゆかりの話の内容を反芻していら。
 食券を買おうと並んだ列で女性社員の3人組がきゃあきゃあとかましく話しているのが耳に入った。

「聞いて聞いて、さっきエントランスで副社長に会ったの!」

「えー!珍しいじゃない、外にランチかな?たまーにあるよね」

「そうなの、すっごくラッキー!相変わらずため息が出るほどカッコよかったわ!思い切ってお疲れ様ですって声をかけたら、お疲れって笑ってくれたのぉー!はぁ~めちゃくちゃ素敵だったぁ」

「えぇーいいなぁ!!副社長って声をかけると必ず気持ちのいい対応してくれるわよね。私も前にさぁ…」

 彼女たちの話の続きを聞きたくなくて真帆は食券の列から外れた。
 すっかり食欲がなくなってしまった真帆は、エレベーターに乗ってビルを出て近くのコンビニを目指した。
 藤堂不動産の社食は安くておいしいと評判で真帆は毎日の日替わり定食を楽しみにしていた。
 でも今日は、全部食べられそうにないと思う。サンドイッチでも買おうかと思った。
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