お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 小柄な体に細い腕ではけして軽くはないだろうその袋を持って歩く姿に、なぜか蓮は軽い苛立ちを覚え、思わず声をかけてしまった。
 本当はそんな仕事はしたくないのだろう、君は苦労知らずのお嬢様なのだからと、言ってしまいそうになりながらシュレッダーゴミを運んでいるわけを問いただす蓮に、彼女は毅然とした態度で言い返してきた。
 一条以外の他の社員には努めてしないように心がけている蓮の、不機嫌丸出しの問いかけに、言い返せるのは、一条か父親くらいのものなのに。
 やはり小鳥遊グループの令嬢は気位が高いのだと思いたかったが、無理だった。どこの世界にシュレッダーゴミを担いだご令嬢がいるというのだ。
 …考えてみれば彼女には初めからずっと違和感を感じていた。
 初出勤だったあの自己紹介の時、蓮は自分でも不思議に思うほど彼女に目を吸い寄せられた。
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