お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 法律事務所の事務員の仕事と秘書の仕事は、実は似ているところがたくさんある。
 弁護士のスケジュール管理、来客の対応、必要な書類の作成、整理…。

「秘書ならできるかもしれない…」

 ぽつりと呟く真帆に、小夜子は嬉しそうに勢いこむ。

「でしょ?でしょ?話だけでも聞いてらっしゃい」

 どこかトンチンカンなところがある母が持ってきた話だから、全く端にも棒にもかからないような話なのかと思っていたけれど、そうでもないようだ。
 真帆は黙って考え込んだ。いい年をした社会人が、いつまでも親に頼っていて良いのだろうかという気持ちが、胸の中に渦を巻いて燻った。
 真帆の今の仕事は茂木の好意で得られたものだが、あのときはそうせざるを得ないある事情があった。
 あれから3年、次は自分の力で新しい一歩を進めたい。けれど、完全なる善意で話を持ってきた母の気持ちも無視はできないと思った。

「わかったわお母さん、ありがとう。おじさまに話を聞いてみる。」

 真帆が頷くと、小夜子は安心したように生姜焼きにかぶりついてにっこりと微笑んだ。
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