お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 視線を合わせて真っ正面から見つめられる。そこに、いつものあの不機嫌な色はなかった。
 さっききれいだと思った瞳のままに見つめられていると思うと何故か真帆の身体は熱くなった。

「私の秘書室はただスケジュール管理や来客対応をしてればいいというものでもないんだ」

 真帆は頷く。それはここ一か月ほどの勤務で真帆も理解していた。

「もちろん来客対応もスケジュール管理も大事なんだが、それ以上に私に必要なのは…君が今してくれたこと、社内から上がってくる案件の整理だ」

 真帆は頷いて耳を傾ける。

「私は副社長といって偉そうにしているが、ただの人間だ。万能ではない。専門は経営学なんだがそれだけでは会社は動かせない」

 業界最大手のデベロッパーのいずれはトップに立つ彼が必要な知識は多岐にわたる。
 経営、法律、経理、労務…。
 全てを一人だけで理解するとすればとてもじゃないけれど業務は円滑に回らない。
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