お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「佐藤は経理のプロだからそっち方面の案件をサポートしてくれる、田中は市場調査のデータに強い、一条は全般だ、今までは法務と労務案件は一条がこなしていたのだが…奴はもともと多忙だからな。今後は…君にやってもらうことにする」

「ふ、副社長!そんな…」

 真帆は思わず声をあげてしまう。あまりにも大抜擢すぎる。

「こ、今回はたまたま知っている分野だったからできたんです」

「もちろん初めから全部できるなどと思ってはいない。でもこれほどの資料を作ることができるくらいの基礎があればその上に実力を積み重ねていくことはできるだろう?」

 真帆の胸がはちきれそうなほど鳴った。

「…私は即戦力でないといらないなんてことは言わない」

 そうだ業界では珍しいほど藤堂不動産は離職率が低い。
 真帆は頷いた。

「…わかりました。精一杯やってみます」

 一日でも早く貴方のサポートができるようになりたいと願った、そのスタートラインにようやく立てた。
 思わず口元を綻ばせた真帆を見て蓮が満足そうに微笑んだ。
 それを見つめながら真帆は、また泣きそうになった。
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