消えちゃいたい
紅茶にまずは口をつける。濃い味わいで甘みのあるアッサムだ。最初は何も入れずに、次はミルクを入れて楽しむ。

そして、マシュマロマフィンに口をつけた。マフィンは口の中に残っても、マシュマロはすぐに溶けてなくなってしまう。まるで最初からなかったみたい。甘みだけが口に残ってーーー。

止まっていた涙が、またあふれた。家に帰らなくてよかったと思う。静かなカフェに自分の泣き声が響くのは嫌だけど、この悲しみを止めることなんてできない。

「……ッうう〜!」

本当に、大好きな人だった。優しくて、大人で、隣に立つためにおしゃれも勉強も頑張ってきた。でも、振り向いてもらえなかった。先輩はきっと、私が先輩に恋をしていたなんて知らない。

口の中にもうないマシュマロみたいに消えてしまいたい。消えてしまったらこんな痛みなんて感じない。きっとずっと眠っていられる。

今まで何度も失恋をした。でも、こんなに傷ついたのは初めて。それほど好きだったんだ、先輩のこと。
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