消えちゃいたい
「ひっ……ひっ……」

泣き続ける私を、女性が見つめている。ヤダ、泣き止まなきゃ。

女性は何かを持ってカフェの外に出て行った。そして、すぐに戻ってくる。

「今、休憩中の看板を出してきました。気が済むまで泣いてください」

女性に言われて、私は「すみません」と謝ることしかできない。でもその言葉さえ嗚咽に混じってうまく言えないんだ。

「よほど、お辛いことがあったんですね」

女性に優しく声をかけられ、私はペラペラと失恋したことを話してしまった。失恋の話なんて誰にもしたことがないのに、今は誰かにこの気持ちを聞いてほしくて……。一人がいいとか思っていたくせに、めちゃくちゃだ。

「失恋……。気が済むまで泣いてください。こんな時は泣くのが一番です」

紅茶のおかわりを用意しますね、と言われる。女性が初めて会ったお客にこんなに親切にするなんて、不思議だ。面倒だと思わないの?

私はマシュマロマフィンにまた口をつける。私の唾液に触れただけでマシュマロは簡単に溶けていって、甘さが口の中に残る。
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