アラサー女子は甘い言葉に騙されたい



 「今日悲しい事があったんじゃない?目が少し赤いよ」
 「それは…………」
 「俺なら癒してあげれるかもしれない。だから、俺に話してみて。笑顔に出来るように頑張るから」


 恋人に言うような言葉。
 そんな事、恋人に言われたことがあったような気がする。けれど、それは………。
 一瞬で光弥や好きだった人を思い出し、吹雪はハッする。
 今まで辛い思いをしたんだ。誰かに少しぐらいすがって甘い思いしてもいいのではないか。そんな誘惑が頭を過った。


 「本当に話をするだけでいいんですか?」
 「うん。もちろん………やってくれる?」
 「はい…………私で良ければ」
 「ありがとう!本当に嬉しいよ」


 男はそういうと、ニッコリ笑って、吹雪の手を取って強く握りしめてきた。その手はとても冷たくなっており、彼は緊張していたのだろうか?と吹雪は思った。




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