アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「これから、よろしくね。………えっと、そう言えばお互いに名前聞いてなかったね」
「確かにそうですね。私は明日見吹雪です」
「俺は、右京周(うきょう あまね)だよ」
周はそう言うと、掴んでいた手を離し今度は握手をしてくれた。
「お願いしますね。俺のお客さん」
「え……あ、はい………」
お客さんと言われて違和感を感じつつも、それが約束事なのだ。吹雪は練習台としてホストに遊びに来たお客なのだ。
「あ、それとさ………」
考え事をしていた吹雪に、周はそっと近づいた。横顔に彼の顔が迫ってくる。会ってから1番近い距離に、吹雪は胸が激しく鳴ってしまう。
すると、周はいたずらっ子のようにニヤリとした表情で吹雪の耳元で囁いた。
「もしかして、甘い事ってエッチこと想像してた?」
「っっ!………なっ…………」
図星でもあり、恥ずかしい事でもあり、吹雪は顔を真っ赤にしながら、彼の体を押して離れた。
すると、周は「ごめんなさい………って、吹雪さん顔真っ赤だよ?」と、赤く染まった顔をまじまじと見られてしまう。
「ちょっと!そんなに見ないで………!」
「あ、もしかして、照れちゃった?なるほどー、吹雪さんはこんな感じの言葉に弱いんだね。覚えておこう!」
「ーーー!違いますっ!!」
完全や年下であろう彼に遊ばれてしまっているようで、吹雪は少し悔しくなりつつも、これからの彼との時間がどんなものになっていくのか。不安の中に楽しみを感じていたのに、吹雪自身は気づかないようにしていたのだった。