琥珀色の夕焼け、空を映した青
「全員を幸福に、なんて非現実的な事は言わないわ。でも、たとえ百人のうち一人でも助けられるなら助けたいって思うのは、無知な可愛らしいお姫様の戯言?」
 感情が昂ぶってきて止められそうに無い。溜め込んでいた感情が雫になって手の上に零れる。
「私、男に生まれたかった。そうしたら、レシュノルティアの王太子様みたいに、国民の為にもっと何か出来たかも知れないのに……」
 ぽろぽろ泣き出した私に、執事さんは視線を床に落として考え込んでしまった。
 そうよね、いきなりこんな事吐き出されて泣かれても困るわよね。そういえば、お仕事もあるだろうに、引き止めてしまっている。
 ダメだ、落ち着かなきゃ。落ち着け、私。
 無理に笑顔を作って執事さんに謝った。
「ごめんなさい。愚痴るつもりは無かったのだけど、執事さん話しやすいから」
 深呼吸して涙を止める。手袋で頬を拭ったら化粧も取れた。多分ひどい顔になってる。ああ、恥ずかしい。
「……初めて言われた」
 ぽつり、と執事さんが呟いた。
「何が?」
「話しやすい、と」
「うん、話しやすいよ。執事さん、聞き上手なんだもの」
「よく、怖いと言われるので」
「怖い? 確かに愛想無いなとは思うけれど、怖くなんて無いわ。執事さんは優しい人よ」
「優しい……?」
「うん、とっても優しい。手当ても上手だし」
 それに格好良いし、と言うのは心の中だけにしておく。
「話も聞いてくれてありがとう。本当言うと、並み居る美人さん達に気後れしてて、会場に居るの怖かったの。でも、執事さんのおかげで元気出たわ」
「……それは良かった」
 愛想無く小声で呟くと、執事さんはふと私の手を取った。

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