琥珀色の夕焼け、空を映した青


『やっと、一緒に生きて行きたいと思える女性に出会いました』
 靴擦れの手当ての後、手を引かれて連れて行かれた先は、エミリア女王陛下、つまり王太子殿下の母君の所だった。
「……執事さん、貴方一体何者?」
「ナイジェル・アガスターシェ・レシュナ。この国の王太子、僕の兄様だよ」
 私の問いに、コウの腕を引いて部屋に入ってきた、海色の瞳をした童顔の青年が丁寧に教えてくれた。
「てか、ダメじゃん兄様。プロポーズする相手にくらい名乗らないと」
「聞かれなかったから」
 飄々とのたまう兄君。弟君は溜息をつき、さらに苦言を吐く。
「しかも突然いなくなるしさ。リクニスと二人、場つなぎするの大変だったんだよ。どこ探してもいないし」
「悪い。過剰な香水と下手な美辞麗句に酔ったから、風に当たりに行った」
 うわあ。執事さん、凄い毒舌……って、この人執事さんじゃなくて王太子殿下だった!
 私は慌てて膝を折り、釈明した。
「な、ナイジェル王太子殿下! か、数々のご無礼、平にお詫び申し上げますっ。あああの、田舎者ゆえ、王太子様とは露知らず、その、たた大変な失礼を」
「謝られる覚えは無いが」
 愛想無い返事は相変わらずなのに、立場を知ってしまった後では責められてるように感じる。ううう怖い。
 と、ふわりと優しく空気が動いた。
「フェリシア姫」
 優しい声に恐々顔を上げると、王太子様と同じ色の瞳と目が合った。エミリア女王陛下は、手袋をしてない私の手を取って微笑む。
「初めまして。ナイジェルの母、エミリア・エルウィシー・レシュナです」
「お初にお目にかか、かかります。レイヴァンズ第一王女、フェリシア・ディル・レイと申します」
 女王陛下が、自分の事を女王とではなく、母親として自己紹介した事に温かいものを感じた。同時に引っかかる疑問。
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