琥珀色の夕焼け、空を映した青
「ナイジェル殿下は、一度こうと決めたらテコでも動かないお方ですからな。反対しても無駄でしょう」
 あまり賛成では無いんだな、という反応だ。仕方ないと思う。この婚約はレイヴァンズにとって有利だけど、レシュノルティアにとってさして利益は無いだろうから。
「全く、どちらにお似になられたのか」
「あら、ナイジェルの頑固な所はダグラス譲りよ」
 さらりと優雅に苦言を躱し、女王陛下は私を見てにっこり微笑まれた。
「貴女を歓迎するわ、フェリシア姫。仲の良い嫁姑になりましょうね」
「光栄です、陛下」
「それでは、ナイジェル」
「はい」
 王太子殿下は私の手を取り、フロアへ続く扉へ向かった。と、扉が開く前にそっと囁かれる。
「一つお願いがある、フェリシア姫」
「なんでしょうか、殿下」
「先の時と同じ様に、畏まらずいつも通りの貴女で僕と話して欲しい」
「え」
 ふ、と不敵に口の端上げて彼は付け加える。
「もう素がバレてるんだ。隠す事も無いだろう?」
「なっ」
 扉が開く。顔を引きつらせた私の手を引いて、王太子殿下はフロアへお出ましになった。


 最後の曲が始まった。フロアに戻った時には非難めいた視線を浴びたが、王太子殿下の一睨みのおかげか今ではかなり下火になっている。
 ゆったりしたステップを二人で踏みながら、私は殿下を見上げて尋ねた。
「ナイジェル殿下」
「何」
「やっぱり、最初の子は男の子が良いですか?」
「…………」
 表情を変えずに黙っている王太子殿下。しかし、その顔がつつつと耳まで赤くなる。何、その反応。
「何照れてるんですか」
「いや、まだそこまで考えてなかったというか、その」
 私から視線そらしてぼそぼそと呟く。珍しく狼狽えている様子に、悪戯心が湧いてくる。
「ナイジェル殿下は純情なお方ですね」
「……からかっているだろう」
「勿論。だって、私だけが狼狽させられるなんて癪なんですもの」
「全く」
 勝気な発言に、彼は溜息をついた。と、ターンの後ぐいと引き寄せられ、一言。
「そういう気の強い所も可愛い」
 今度は私が赤くなる番。お互い顔を見合わせ、同時に吹き出した。
 出会ったばかりで、恋する前に決まった結婚。だけど。
『共に歩いていきたい』
 私はきっと、この人に恋をする。そんな、幸せな予感がした。
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