琥珀色の夕焼け、空を映した青
海を映した青
 レシュノルティア国第一王子、ナイジェル・アガスターシェ・レシュナ殿下。
 御歳二十二歳、私より二つ歳上。弱冠十二歳の頃から既に次期君主としての頭角を見せていたという。母君のエミリア女王陛下は国民の信頼も厚く、気さくなお方らしい。国内の経済や治安は安定している。主な資源は海産物。離島の小レシュノルティア付近で採れる真珠は『白い涙』と呼ばれ、質が高い事で有名だ。
 女王陛下の後継であるナイジェル殿下は、結婚と同時に戴冠する。レシュノルティアの王太子にしては婚約が遅く、側近の方々は一刻も早くナイジェル殿下に妃を見つけねばとあれこれ奮闘なさってるらしい。お可哀想な王太子殿下に、心から同情申し上げる。
「姫様、緊張してますか?」
 黙って海を見ている私に、隣に座ったコウが尋ねた。礼装に身を包み、すっかり『姫の付き人』に変身したコウはいつもより格好良く見えて、柄にもなくドキドキしてしまう。
「緊張するわよ。いつボロが出るかってね」
「大丈夫ですよ。十分淑やかな姫君に見えます」
 コウはくすりと笑って付け加える。
「――黙っていれば」
「喧嘩売ってる?」
 指を鳴らして睨んでやると、コウは笑いながら私の手を包んでたしなめた。ふと、表情が変わる。隠していた震えが伝わってしまったんだろう。
「……不安、ですよね」
 両手でしっかりと私の手を握って、コウは言った。
「大丈夫です。俺が付いてますから」
 力強い声、真っ直ぐな言葉。夕陽を閉じ込めた宝石に似た、琥珀の瞳。
「ありがとう」
 コウに手を預けたまま、私は再び海を見つめた。
 船はもうすぐ、港に着く。
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