恋に負けるとき

田所さんフリーク その上五里霧中の巻

 



「どうぞ」




って、なぜかチカに見守られながら



ノートをうつす。




カリカリ。



シャーペンがノートをこする音が響く。



何なんだ。この空気。




チカが1人で喋り続ける。




「ねえ、渋谷。



また、ゆかたちと遊びに行こうよ。」




「あー。でも、おれ部活あるし」




「休みの時にでいいじゃん。



海行ったの、覚えてるよね!




めっちゃ、楽しかったじゃん。



サトルたちが服着たまま飛び込んでさ!」



「あー…



そんなんあったな。」




何でそんな話すんだよ?









田所さんといるときにしなくていいだろ。




さっきから、何なんだよ。チカ。




内心。イラついてしまう。



「聞いてよ。田所さん。



そんときね、渋谷。



F女のアキちゃんって子。



あたしの友だちなんだけど。



その子といい感じになっちゃって」




は?何言ってんだ。



「おーい。チカ?




やめてくれる?



それ以上言ったら。泣くぞ。

 

おれが」




焦るわ!チカ!




笑いで済ませようとしてんのに。




チカがまだ言う。



「いいじゃん。



ほんとのことじゃん。



2人で消えたじゃん」




爆弾投下。




思わず絶句。




まだまだ、爆弾魔チカは喋ってる。




「田所さんって彼氏も、好きなひとも



いたことないって、



ほんと?」



すごい不思議そうな口調で尋ねる。



「おい。」




おれの声は無視。



チカーっ。



マジ、何なんだ、おまえー。




何で、そんなこと知ってんだ?



そして、何でそんなこと聞く?



「え、


…うん。



おかしいよね。




私。そういうの、よく



わからなくて」




空気を変えようと



田所さんがちょっと笑って言った。




チカもちょっと笑って言う。



でも、それは



「田所さんって、小学生みたいだね。」




バカにしたような笑いで。




「おい」




どんっ。




机が大きな音を立てる。



思わずおれのこぶしが机を。



「チカ。」



「お前もう帰れ」



マジ。キレそうだ。




「何でよ。ほんとのことじゃん。」




おれの剣幕に



チカの顔が青ざめる。



「…いいから、もう帰れって」



おれの静かな声に




チカはわざと大きな音を立てて、



教室を出て行った。



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