続・闇色のシンデレラ
「それで?」



その後ろ姿が見えなくなるとお母さんはにこりと微笑む。


わたしはその笑顔の意味を勘違いして頭を下げた。



「勝手なことをしてごめんなさい。浅はかだって自分ではわかってるけど……」

「違う違う、そっちじゃなくて、初孫のことよ。
実は気になって春ちゃんからちょくちょく様子を聞いちゃって」



春ちゃんと言われ、潮崎先生を思い浮かべた。


そうだ、潮崎春海先生こと、『春ちゃん』はお母さんと昔なじみだった。



「もうつわりは大丈夫?」

「はい、ご飯の炊ける匂いも大丈夫だし、発熱もなくなりました」

「よかった。じゃあこれからは一緒に成長を見守れるわね」

「はいっ」



大きくうなずいたわたしの声はお母さんの声色といっしょで弾んでいて。


流れこんできた風には夏の気配がした。
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