続・闇色のシンデレラ
SIDE 絋香



「壱華ちゃん、ちょっとお邪魔するわね」



志勇がいない昼間こそ、大事な可愛い娘と話せるチャンスと本家の離れに足を向けた。



「……壱華ちゃん?」



けれど返事がないものだから、出かけてるのかしらと思って玄関を見回すと、ちゃんと彼女の靴は置いてある。


不審に思い、今は懐かしいその玄関にそっと足を踏み入れた。





「あら……」



探した彼女は、開けっ放しの寝室で丸くなってすやすやと眠っていたみたい。


可愛いと近づいてベッドに座ってみたけど、近くで見た壱華ちゃんの顔色は青ざめていて悪い。



「こんなにやつれて……」



きっとつわりが辛いのね。……だけど女ならほとんどが経験する道。


それにあなたなら、わたし達にそっくりのあなたたちなら乗り越えていける。


そう想いが伝わるように、「大丈夫、大丈夫」と頭をなでる。







「でも、お願いだから、わたしのようにはならないでね?」







それから、わたしが体験した『悪夢』を繰り返しませんようにと彼女に念じる。


……お腹の大きい妊婦を見るといつも思い出すの。あの痛みと赤い光景を。


そのお腹の中に新たな命を育む壱華ちゃんの手を握って、独り底知れない過去の恐怖に囚われた。
< 21 / 372 >

この作品をシェア

pagetop