続・闇色のシンデレラ
次の日から、ベットの上が生活の拠点になった。

トイレ、お風呂、食事、それと身体の負担になりにくい最低限の家事以外はずっとベットで横になる生活。

わたしはベットの上で、よく本を読んだ。

ミステリー、ファンタジー、SF、ノンフィクション、物語の行く先を愉しみながら、1日一冊を目安にたくさんの本を読んだ。

今読んでいるのは、「アルジャーノンに花束を」。

これは叔父さんの書斎にあった本でよく読んでいたけど、いわずと知れた名作らしい。

初めて読んだときは中学生だっけな。

あの時のカラカラに乾いてひび割れた私の心にも、この小説はひどく染み渡って響いた。

ストーリーの展開としては現実味はないのに、どこかリアルで悲しくも美しい、お気に入りの物語だ。




「壱華……?」




ラストシーンに差し掛かかったとき、志勇の声が聞こえた気がした。

だけど本の世界に入り浸っていたため、その声に反応するより早く、ほろっ——とわたしの頬を涙が伝った。



「壱華!?どうした」

「あ、志勇……」



本を読んで泣けるようになったなんて。

自分に驚きながら、大慌てで部屋に入って来た志勇を見つめた。



「どうした、どこか痛むのか?それとも……」

「ふふっ、本を読んでただけだよ」


眉根を寄せて心配する志勇に笑いかけた。



「本?読書で泣くか?普通」

「いい話なんだよ、これ。きっと誰が読んでも最後には泣いちゃうような、素敵な話」

「へぇ、本は読まないから分かんねえな」



志勇は杞憂だったかと安心すると同時に不可思議そうな顔をした。
< 266 / 372 >

この作品をシェア

pagetop