クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「夏久さん?」

 気付けば、雪乃さんに顔を覗き込まれていた。
 距離がそれほど近いわけではないのに、ぎょっとしてしまう。

「な――んだ? どうした?」
「手が止まっていたので、食欲がないのかと……」
「あー……いや、そうじゃないんだ。考え事をしていただけで」

 同じ返答を昼にもしたのを思い出す。
 橋本と同じく、雪乃さんの表情からも心配が窺えた。

(心配しているのは本当だろう。なにに対しての心配かはわからないが)

 彼女が俺を通して俺の持つものを見ていないなら、この心配も素直に喜べる。
 けれど、それを裏付ける証拠がない以上、やはり喜べない。

「仕事でいろいろ面倒な処理があったんだ。……それだけだよ」
「そうですか……。なにか手伝えることがあったらよかったんですけど」
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