クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「……っ、う」

(入らない……!)

 動きやすさを重視したスポーティーなパンツスタイル。軽い生地のシャツに七分丈のスキニージーンズと、悪くない選択だと思えたのに――。

「う、う……」

 お腹がきつくなるならわかる。けれど、まさか足までこんなに変化があるとは思ってもいなかった。

(そういえば、先生がむくみに気をつけなさいって言ってた気がする……)

 病院で言われたことを思い出すのが少し遅かった。
 がっくりしながら、きつくなってしまった服をタンスの奥へとしまう。

(こうなったらスカートにしよう。身体のラインがなるべく見えないものを……)

 新しい服を引っ張り出した手が止まる。
 ここにある多くの服は、私が以前から着ていたものだ。
 もちろん妊娠がわかってから身体の変化に合わせて購入したものもあるけれど、かわいいと思って買ったものはほとんど妊娠前に購入している。

(おしゃれしたかったのに)

 最終的に選んだのは薄いラベンダーカラーの無難なワンピース。足まで覆うようなそれは、身体のラインをばっちり隠してくれる。
 これだって別に悪い代物ではない。でも私が望んでいたおしゃれかと言われると怪しい。

(今日、散歩の予定があってよかった。本番のデートでいい服を用意しなきゃいけないことがわかったから)

 こんなふうに、今日は気付きがたくさんあるのかもしれない。
 そう考えて気持ちを新たに、服でちらかった部屋を片付け始めた。
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