クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい

 昨日の夜は寝付けなかった。それを伝えたら、きっと夏久さんは怒るだろう。

(でも、怒られるのが嬉しい)

 朝はいつもと変わりなく訪れた。見送るとき、今日は私を振り返ってくれたのが嬉しかった。

「じゃあ、また午後に」
「はい」

 待ちに待った水曜日、夏久さんを会社へ送ったあとにすぐ自室へ向かう。
 タンスの中身をひっくり返し、どの服がいいのかを吟味するつもりだった。

(デートはまだだけど、予行練習みたいなものだし)

 ひとりで勝手に浮かれている自覚はある。私がおしゃれをしてみせたところで、夏久さんはなにも言わないだろうということもわかっている。
 でも、私のおしゃれは夏久さんの反応のためだけではないつもりだった。
 私が好きな人の前で下手な格好をしたくないだけ。

(スカートがいいかな。あ、だけど歩きやすいようにパンツの方がいいかな)

 とりあえずコーディネートを考えながら、いくつかいい具合の組み合わせを考えてみた。ひとまず着てから鏡を確認しようと思ったけれど、ここで大きな問題が発生する。
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