クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 問題ないことを示すように靴を手に取り、すぐに履く。急がなければと気持ちが焦っていたから少しよろけてしまったけれど、さりげなく夏久さんが腰を抱き支えてくれた。
 あまりにも当たり前のようにそうされて、自分でも違和感なく受け入れてしまった。
 あれ、と思ったのは外に出てからのこと。

(ああ、もう)

 こういう嬉しかったことは、もっと噛み締めなければならない。
 ひとつひとつ思い出せるように、心に留めて宝物にしなければならない。
 心を添わせた夫婦になれないなら、せめて幸せだと感じたことを覚えておきたかった。

 外に出ると、夏久さんは私のすぐ横に立った。
 距離はとても微妙だった。夫婦にしては遠いし、友人にしては近い。
 寂しいと思うより、嬉しかった。友人の距離より近いのは、私になにかあったときにすぐ対応するためだと察しがついている。夏久さんはそういう人だからだ。
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