クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「散歩するなら外出も仕方がないと思ったが、まさか朝から晩まで何時間もしているわけじゃないだろうな」
「そんな。さすがに疲れちゃいます」
「疲れなかったらやるのか?」
「怒られるからやらないです」
「基準はそこなのか」

 また呆れられてしまう。そんな夏久さんの反応がくすぐったくて、なにかおもしろいことを言われたわけでもないのに笑ってしまった。
 教えた通りの横道に入り、住宅地を抜けて公園の外周に出る。
 想像していたよりも早く公園に着いたからか、夏久さんは驚いているようだった。

「このあとはいつも公園で過ごすのか?」
「いえ、違います」
「まだ歩くつもりじゃないだろうな」
「まだまだ歩きますよ。お散歩ですから」
「……歩きすぎなんじゃないのか」
「まだ家を出て五分しか経ってないですよ」

 夏久さんは心配性だ。そんなにがんじがらめにしなくても、私だって自分の限界くらいはわかる。
 この感覚には覚えがあった。ほかでもない父と同じだ。
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