クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「結構遠回りしたな……」
「いい運動になると思いませんか?」
「歩きすぎだ」
「もし本当にそう思っているなら、夏久さんは運動不足なんです」
「この程度で疲れるほど歳は取ってないぞ」

(そういえば年上なんだった)

 二十を過ぎてしまえば、もう三つ上だろうと五つ上だろうと変わらない。だからなんとなく、夏久さんの年齢について深く考えたことがなかった。

(年下がいいとか同い年がいいとか、考えたこともなかったけど……)

 ちら、と夏久さんを見上げる。

(年上の男の人はかっこいいと思う)

 精悍な横顔に胸の高鳴りを覚えていると、視線に気付いた夏久さんがこちらを見た。

「で、次は?」
「あっ、お店を見ます」
「店?」

 気を取り直して案内を再開する。
 駅前にはいくつも店があって、ここまで歩いてきた道の様子とは違い、かなり賑わっている。皆、駅を利用するついでに買い物を済ませていくからだろう。
 歩きながらケーキ屋を流し見て楽しい気持ちになる。
 以前、夏久さんが用意してくれた大量のタルトの中にはこのケーキ屋のものも含まれていた。
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