クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「駅で休憩を兼ねてゆっくりしたら、次はあっちに行きます」
「なにかあるのか?」
「どうでしょう……? 隣の駅……?」
「目的があって移動してるわけじゃないんだな」
「そうですね。なるべく人通りの多い道を選んで歩いているだけです」
「なにかあったときに安心だしな。さすがに君もそういう分別はあるか」
(夏久さんって、ときどきひと言多い気がする)
思えば最初に過ごした夜も私を世間知らずだと繰り返し、からかう素振りを見せていた。嫌な人だとまでは思わなかったけれど、むっとしたのを覚えている。そして夏久さんはそれを告げた私にすぐ謝ってくれたのだ。
(意外というか、なんというか……不思議な人だなあって思ったんだよね)
隣の駅に通じる道を歩きながら、また夏久さんの横顔を盗み見る。
今度は私の視線に気付かなかったのか、こちらを見下ろすことはなかった。
しばらく会話が途切れ、歩くだけの時間になる。
寂しく感じるか、もしくは焦りを覚えるかだと思ったのに、なぜか気持ちは凪いでいた。沈黙が苦しくないと言えば嘘になるけれど、気まずさは感じない。
そうして歩いているうちに、ふと見覚えのある人影が見えた。その足元にはやはり見覚えのある影がある。
「ちよしくん!」
「なにかあるのか?」
「どうでしょう……? 隣の駅……?」
「目的があって移動してるわけじゃないんだな」
「そうですね。なるべく人通りの多い道を選んで歩いているだけです」
「なにかあったときに安心だしな。さすがに君もそういう分別はあるか」
(夏久さんって、ときどきひと言多い気がする)
思えば最初に過ごした夜も私を世間知らずだと繰り返し、からかう素振りを見せていた。嫌な人だとまでは思わなかったけれど、むっとしたのを覚えている。そして夏久さんはそれを告げた私にすぐ謝ってくれたのだ。
(意外というか、なんというか……不思議な人だなあって思ったんだよね)
隣の駅に通じる道を歩きながら、また夏久さんの横顔を盗み見る。
今度は私の視線に気付かなかったのか、こちらを見下ろすことはなかった。
しばらく会話が途切れ、歩くだけの時間になる。
寂しく感じるか、もしくは焦りを覚えるかだと思ったのに、なぜか気持ちは凪いでいた。沈黙が苦しくないと言えば嘘になるけれど、気まずさは感じない。
そうして歩いているうちに、ふと見覚えのある人影が見えた。その足元にはやはり見覚えのある影がある。
「ちよしくん!」