クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 幸せだと感じた夜の、これ以上ない贈り物。父に心配をかけ、夏久さんに迷惑をかけ、自分の人生さえ変えてしまった大きすぎる贈り物。
 この子が引き起こしたことは多かったけれど、どれも恨む気にはなれない。むしろ、私の迂闊さの犠牲にしてしまったようで申し訳なさの方が強かった。
 同時に、母親としてのものなのか、ほかの誰にも感じたことのない愛情をこの子に対して抱いている。私が巻き込んでしまった分、幸せにしてあげたかった。

(そのためにも、せめてもう少し夏久さんとの関係を改善したい)

 不意に夏久さんの手が私の顔に伸びた。
 驚いて目を閉じると、風が吹き抜けるのと同時に目尻に指のぬくもりが触れる。

「あ、の……夏久さん……?」
「髪、乱れていたから」

 素っ気なく言うと、夏久さんは私の返答も待たずに歩き出してしまう。
 なにが起きたのか理解はしていたけれど、どうしてそんなことをしてきたのかはわからない。ただ、私に触れた夏久さんの手は優しかったような気がした。

「あ――りがとうございました」

 声を詰まらせながらお礼を言い、夏久さんの後を小走りで追いかける。
 私が走ったことに気付き、夏久さんはすぐ立ち止まった。
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