クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「右手は手すりから離すなよ。左手は俺が支えておくから。一歩ずつゆっくり降りろ」
「……えっ、いいんですか?」
「よくない」
(それなのに……)
おずおずと夏久さんの手を取り、言われた通りに右手を手すりに添えた。
私がどんなにゆっくり降りようと夏久さんは急かさず、待ってくれる。一歩一歩確実に降りながら、私は足元より夏久さんが握ってくれている左手に意識を向けていた。
「そこ、ちょっと崩れてる。気を付けろよ」
「はい」
ときどきそんなふうに声もかけてくれて、特に甘い言葉でもないのに心が浮き立つ。
この階段がもっと長ければいいのにと思う気持ちを止められなかった。そうすれば夏久さんと夫婦らしく寄り添って歩き続けられる。
けれど、残念なことに終わりが来てしまった。
地面に降り立つ最後の一段をぴょんと跳ぶ。
「こら。子供じゃないんだから」
「ごめんなさい。つい」
「つい、じゃない」
安全な場所にたどり着いたことで夏久さんの手が離れていく。
(本当に、私を守るためだけの手だった)
「……えっ、いいんですか?」
「よくない」
(それなのに……)
おずおずと夏久さんの手を取り、言われた通りに右手を手すりに添えた。
私がどんなにゆっくり降りようと夏久さんは急かさず、待ってくれる。一歩一歩確実に降りながら、私は足元より夏久さんが握ってくれている左手に意識を向けていた。
「そこ、ちょっと崩れてる。気を付けろよ」
「はい」
ときどきそんなふうに声もかけてくれて、特に甘い言葉でもないのに心が浮き立つ。
この階段がもっと長ければいいのにと思う気持ちを止められなかった。そうすれば夏久さんと夫婦らしく寄り添って歩き続けられる。
けれど、残念なことに終わりが来てしまった。
地面に降り立つ最後の一段をぴょんと跳ぶ。
「こら。子供じゃないんだから」
「ごめんなさい。つい」
「つい、じゃない」
安全な場所にたどり着いたことで夏久さんの手が離れていく。
(本当に、私を守るためだけの手だった)