クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
(紳士的な人ってこういう人を言うのかもしれない)

 ひと口飲んで、ゆっくり息を吐く。

「あの、ありがとうございました」
「お礼を言われるようなことじゃない。当然のことをしただけだよ」
「……お詫びに奢らせてくださいね」
「女性に財布を出させる趣味はないんだ」
「でも」
「ここで帰らずにお茶を飲むあたり、やっぱり世間知らずなお嬢さんだからなのか?」

 嫌味な言い方ではなかったし、純粋に疑問を覚えている口調だったけれど、聞き捨てならない。

「さっきから人を世間知らずって言いすぎです」
「事実だと思うけどな」
「事実でも……。……あんまり言われたくないです」
「……悪い。そうだよな。褒め言葉じゃないわけだし」

 あっさり謝罪されて、言った私の方が拍子抜けする。

(変な人……)

 ちびちび温かいお茶を飲みながら、彼を盗み見る。
 この人もまた、こういう場所に慣れていそうだった。だからと言って、先ほどの男性のように距離感がおかしいとは思わない。むしろ、非常にちょうどいい。
 さっきの恐ろしい状況を落ち着いて受け止められているのも、こうして側にいてくれるおかげだった。もしひとりだったら、抱えきれなかったかもしれない。

 そしてこの人は余計な詮索をしてこなかった。
 世間知らずだと思うなら、もう少しあれこれと質問してきてもいいはずだ。それをされればされたで戸惑っただろうけれど。
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