クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 しばらく無言のままお茶をお腹に流し込んでいく。
 不思議とこの沈黙に苦痛を感じなかった。落ち着くとさえ思うほどに。

「私……あなたの言った通り、バーに来たのは初めてなんです」
「なのに、ひとりで?」
「夜遊びをしたくて……」
「なにをしたいって?」
「夜遊びです。したこと、ありますか?」
「……なんて答えれば君のお気に召すかわからないが、まああるんじゃないか」
「羨ましいです」
「君は今までどんな世界で生きてきたんだ。俺ですらそこまでじゃないぞ」

 呆れられているように感じたけれど、突き放されているようには感じない。
 だからつい、また口が軽くなる。

「昔から厳しく育てられてきて。今日からひとり暮らしなんです」
「こら」
「ん?」
「ひとり暮らしなんて言うんじゃない。俺が君の帰り道をつけたらどうする? 誰も助けてくれないんだぞ」
「ついてこないでほしいです……」
「いや、それは大前提なんだけどな」

 そう言ってから、彼は少し笑った。
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