クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 自分のものだとは思えない情けない悲鳴が漏れた。けれどそれもすぐ夏久さんのキスに奪われて、そのぬくもりの中に溶けてしまう。

 この人の子供を産んで、母親になったはずだった。だけどふたりでいるときはいつだって、母親から恋人にされる。愛されて甘やかされるのが当然だと、心と身体に刻み込まれるせいで。

 ぎゅ、と夏久さんを抱き締める。素敵で最高の旦那さまだからこそ、私もこの人を――父親から恋人にしてあげたかった。

「――大好き」

「俺も同じぐらい愛してる」

 すぐに返ってきた愛の言葉は荒い吐息が混ざってひどく熱っぽかった。それがまた私の心を夏久さんに惹きつけて縛ってしまう。

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