クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「過保護ですし、束縛されてきたなとも思うんですが。……早くいい人を見つけて、安心させたいです」
「へえ、結婚を考えているのか」
「父を安心させられるような人が見つかれば、ですけどね」
「君ならすぐ見つかるよ。少し話しただけでも魅力的な人だなって思う」
「褒め上手ですよね、夏久さんって」
「なら、君は褒められ上手だ。なんでも素直に受け止めてくれるから、褒め甲斐がある」

 そんなふうに言われても、嬉しい言葉をうがって捉えるのは難しい。

「君は世間知らずなんかじゃないな。ただ、ずっと優しい世界で生きてきただけだってよくわかった。そうじゃないとそこまで素直には育たない」
「素直じゃないところの方が多いですよ。まだ夏久さんが知らないだけで」
「そう言われると知りたくなるな」

 茶化すように言いながら、探るように私を見つめてくる。
 やけにその目が真剣に見えて、胸の奥がざわついた。
 なかなか消えないそれをごまかすように、グラスを口に運びながら言葉を選ぶ。

「……褒められると嬉しいです」

 うまく頭が回らなくて、直前の会話と繋がらないことを言ってしまう。

「ん? まあ、そうだろうな」

 夏久さんが私の言葉を受け止めてくれたことの方が嬉しいと思いながら、さらに言葉を続けた。

「父が頑張って育ててくれたのを知っているので。誇らしくなります」
「……なるほど、そういう意味でか」

 誰も父の苦労を知らないし、これから「よく頑張った」と言ってくれる人はそうそう現れない。けれど、私が誰かに認められれば父のしてきたことが報われる。
 自分が褒められると嬉しいのは、そういう理由からだった。
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