クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
(もっと抱き締めてほしいって言ったら、抱き締めてくれるのかな)

「夏久さ――」
「そろそろ時間だな。行ってくる」

 ふい、とそっけなく夏久さんが離れてしまう。
 そしていつものようにさっさと玄関を出て行ってしまった。
 昨日までだったら、拒むように出て行く背中を寂しいと思っていた。
 でも今日はなんだか違う気持ちでいっぱいになっている。

「……やっぱり、パパは優しいね」

 まだほとんど膨らみのないお腹を撫でて話しかけてみる。

「この調子で、あのときみたいになれたらいいな」

 なりたい――と強く願う自分がいる。
 わずか数分の出来事に頬が緩むのを感じながら、これからは夏久さんを心配させないように過ごそうと心に決めた。
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