クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「君がそれをこなしているかどうか、俺にはわからないだろ。もしかしたら昼を抜いているかもしれないし、つわりが急にひどくなって食べられなくなることがあるかもしれない。そのときに備えて用意するのは当然だ」
「だけど、ここまでしなくても大丈夫だと思います……」
「君は妊娠しているのに平気で歩き回るし、この間だって買い物に出かけたがっていた。そんな人の“大丈夫”は信用できない」

 夏久さんに譲る気はなさそうだった。
 いくつものサプリメントを取り出しては、どれをいつ飲むのか、何粒飲むのかを説明していく。
 頭の中で数えてみると、両手の指が足りない量を飲まなければならないことがわかった。(本当に薬漬けになりそう……)

 ここまでくると、もはやなんの栄養素が私のためになるのかわからなくなってくる。
 でも、夏久さんがここまでする気持ちも理解できなくはなかったから、拒めない。

(子供のことを心配してくれているから)

 私は妻として認められていない。
 でも、子供の存在は認められているし、大切にされている。

「――で、貧血気味だと言っていたからこれも……。……どうした?」
「あ……すみません、ちゃんと聞いていなくて」

(すごくありがたいし、助かる。だけど……ちょっと不安だな)

 私が感じた不安は、それからしばらくも経たないうちに形となった。
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