クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「えっ」
「夕飯は無理に食べなくていいから、待っててくれ」
「買ってくるって、そんな今から――」

 私が止めるのも聞かず、夏久さんは足早に家を出て行った。
 ぽかんとしたまま、残された料理と大量のサプリメントとを交互に見る。

(……どうしたんだろう)

 無理に食べなくてもいいと言われたけれど、このままでは料理が冷めてしまう。
 夏久さんだって食べている途中だった。
 それなのに。

(どうして……?)

 さっき握られた手が少し熱い。
 私はそのぬくもりを知っていた。
 もう一度、触れたいと思っていたぬくもりだった。

(名前……呼んでくれた)

 たったそれだけのことが泣きたいくらい嬉しくて、結局、我慢できずに少し泣いてしまった。
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