クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい

 外に出てすぐ、秘書に連絡を取る。

「橋本、頼みたいことがある」
『時間外労働として請求してもいいならどうぞ』
「二割増しで請求していい。――三十分後にうちまで来てくれ。近辺のケーキ屋を全部あたってから」
『はい?』

 橋本は俺の中で数少ない信頼できる人間のひとりだった。
 これまでに紹介した相手から「秘書ではなくボディガードかと思った」と言われるほどの体躯をした大男な上、顔つきも強面でかなり近寄りがたい。おかげで、橋本を連れているとパーティーなどで女に声をかけられずにすんだ。
 もちろん秘書として有能なこともあり、気付けばこんなふうに公私関係なく頼るようになっている。
 そのせいか、社長と秘書という関係にしては遠慮のないやり取りも恒例のことである。

「妻がいちごタルト……か、もしくはフルーツタルトを食べたがっている。だが、どういうものがいいかわからないんだ。だったら手あたり次第にケーキ屋を回って、数を用意するしかないだろう」
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