クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 妊娠したという話を聞いてから、ずいぶんと本やインターネットの情報を調べた。父親としての心構えをするつもりも大きかったが、それ以上にどういった危険があるのか把握しておきたくて。
 現代医療は昔に比べれば遥かに優秀で、信頼が置けるものになっている。けれど、だからといって最悪の事態を迎える可能性がゼロではない。

 もし、彼女になにかあったら。

 ゼロではない可能性を限りなくゼロに近付けるため、なにができるか。
 危険から遠ざけ、不足しやすい栄養素を調べ、聞き、用意した。
 彼女のためにと自分にできることをしてきたつもりだったが、先ほどのつらそうな顔を見て気付かされてしまった。

(雪乃さんのためじゃない。俺は、俺自身のためにやってきただけだった)

 ただでさえ冷えた夫婦関係にあったのに、一方的に庇護を押し付けられてどう思ったことだろう。
 彼女がそれを苦手に思っていることを(・・・・・・・・・・・・・・・・・)最初の夜には知っていたというのに(・・・・・・・・・・・・・・・・)

(今、こうやっていることも自分のためなんだろう。それでも、俺は)

 ――夏久さん、とはにかむ顔が好きだった。
 あんなふうにつらそうに目を伏せる人じゃなかった。

(どうやって君と接したらいいのか、わからない)

 一軒目のケーキ屋を発見して足早に駆け込む。
 また笑ってくれるなら、店ごと買い占めてしまっても構わなかった。
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