クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
あの日をきっかけに、夏久さんは毎日私に食べたいものを聞くようになった。
特にないと言えば好きなものを買ってきて、なるべく私に楽しく食事をさせようとしてくる。
困ることと言えば、好きだと言ったものが連続して食卓に並びがちなところだった。
限度がわからないというよりは、不足がないように備えすぎるのだと思う。
それはサプリメントやフルーツタルトの例を見ていると理解できた。
(あのタルト、おいしかったな)
洗濯物を取り込みながら甘酸っぱい味を思い出す。
大量のタルトは結局ほとんど夏久さんが食べる羽目になった。
意外と甘いものがいけることと、かなりよく食べる人だということをそのときに知った。
だから最近はちょっと不安に思っている。
(毎日私に合わせて夕食を買ってきてくれるけど、たまにはがっつりしたものを食べたくならないんだろうか。かつ丼とか、焼き肉とか……)
それ以上に気になるのは食費である。
連日外食しているのとほぼ変わらないのだから、当然かなりの出費になっているはずだった。
私が指摘したとき、夏久さんは微妙な顔をしていたけれど。
「この百倍食費を使っても養えるだけの収入はあるんだけどな」
そう言ったのを聞いて、そういえばお金持ちだったらしいということを思い出した。