春夏秋冬

海にいるもの




海が近いこの街には、雪などめったに積もらない。うっすらと積もってもすぐに溶けてしまう。


年が明けて、新年の慌ただしさも落ち着いたその日は、珍しくグラウンドに誰かの作った雪だるまが現れるほど、雪が積もった。

最近、ユウトはずっと上の空だ。

話しかけても生返事だし、いつにもましてぼーっとしている。


「ユウト?」

頬杖をついて、窓の外を眺めるユウトに声をかけると「んー…」とだけ帰ってきた。


「今日、一緒に帰れるの?」

「そうだね」

「部活は?」

「今日はいいや。よし、帰ろう」


ユウトは立ち上がった。

すでにまばらになった教室の中で、ユウトのイスががたがた鳴るのが、やけに響いた。
< 109 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop