春夏秋冬



寿人は、よく笑っていた。

サッカーが好きで、よく日に焼けて真っ黒になった顔と白い歯が思い浮かぶ。

俺に手を妬いた担任が翌年、寿人のクラスを受け持った時、寿人をベタ褒めしていたと母親が言っていた。

よく出来た弟だった。

学校に行かない俺とは対象的に、風邪をひいても学校に行きたがるような。

俺が学校に行かなくなってズレだした家族の歯車が壊れなかったのは寿人がいたからだろう。

父さんよりも母さんよりも、俺の存在を認めてくれていた。

俺の描く青が好きだと言った。



それなのに、それなのに。

世界は無常だった。

寿人の体はいつの間にか病に蝕まれていた。

サッカーの練習の後、倒れた日から半年も経たないうちに病院のベッドでほぼ寝たきりの状態になってしまった。

なぜ。

寿人がこんな運命を背負ってしまったんだろう。

なぜ。

俺じゃないんだろう。


なぜ。

別段、夢や希望があるわけではない俺が健康で、夢も将来も周りの信頼さえも豊かにある寿人がこのベッドに横たわらなければならないんだろう。

そう、思った。
< 119 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop