【完】ボクと風俗嬢と琴の音
琴音は誰にもちっとも懐きやしないけど
琴子は特別だった。
「ねぇ、いつかうちの猫ちゃん見に来てよ。
琴子さんも一緒にね」
「そうだね、いつか………」
いつか、なんて来ない事は知っていた。
それでも彼女の言葉に笑って応えた。
琴子は山岡さんの猫を見て、なんていうだろうか。
きっと、あのとびきりの笑顔を見せて「可愛い」とその子を抱きしめるだろう。
そんな日は来ないと知りながら、それでも願わずにはいられなかった。
その夜
帰って来て、琴音がお出迎えしてくれて
いつものように家事を一通りこなし、琴音と遊んで、琴音が飽きて俺の横で眠りについたら趣味の時間。
’ハルー’
俺を呼ぶ声が聴こえない。
当たり前の事だけど
見ていた漫画は数ページで飽きた。
映画を見ようと思っても、見たい映画は見当たらなくて
ゲームをしようとしても、ひとりでは何か味気ない。
テレビでは全く笑えないお笑い番組がやっていて、あぁこの番組を琴子はお腹を抱えて笑って見てたっけ。
何をしても、ひとりでは全く楽しくない。