Please eat me.~チョコレートは私~
唇が離れ、どちらの口からもチョコの香りの吐息が落ちた。

「一粒五百円の味はどうだったよ?」

「……おいしかっ、た。
……です」

ニヤリ、と右の口端だけを上げて課長が笑う。
狡い。
いつもあなたばかり、私をこうやって翻弄して。



八杉課長と付き合うようになったのは、クリスマス。
季節の変わり目で風邪を引いて熱もあるのに、仕事が気になって出てきた私は、課長にこっぴどく叱られた。

「帰れ!
迷惑だ!」

そこまで言われ、半べそで会社を出た。
外に出たら足下までふらついてきて、立っていられなくてその場にしゃがみ込む。
あーあ。
八杉課長の言うとおりだった。
無理して出てきて、人に迷惑かけて。

「タクるぞ」
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