Please eat me.~チョコレートは私~
誰かが私の腕を掴んで立たせる。
ぼーっとしたあたまで見上げたら、八杉課長の顔が見えた。

結局、課長は私を家にまで連れて帰ってくれ、さらには寝込んだとき用の飲み物や食べ物、薬なんかまで揃えてくれた。

「おとなしく寝てろ。
仕事のことは気にしなくていい。
元気になったら出社してこい」

最後に私の額に冷却シートを貼り、あたまをぽんぽんして課長は帰っていった。
課長があんなに優しいなんて知らなかった。
それ以来、八杉課長が気になって思い切って告白したクリスマス、思いがけずOKがもらえて、付き合うようになった。

でも私にはいまだにわからないのだ。
なんで八杉課長が平均以下の私なんかと付き合っているのか。
だから今日だって、チョコを渡す自信がなかった。



「……狡い」

口を突いて出た言葉と共に、涙がぽろりと落ちていく。

「私ばっかりこんなに八杉課長を好きで。
課長は私を、からかってばかりで」
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