Please eat me.~チョコレートは私~
泣いているなんて思われたくなくて、涙を拭う。
けれど涙は次々にこぼれていった。

「……奏衣(かなえ)?」

不愉快そうに眼鏡の下で右眉が上がった。
そのまま立ち上がって机を回り、私の前に立つ。

「狡い。
狡いです……」

「……ごめん」

不意に、甘いバニラの香りが私を包んだ。

「俺は奏衣が好きだよ。
奏衣から告白されてたとき、嬉しすぎて死ぬかと思った。
俺もずっと、奏衣が好きだったから」

「八杉課長……?」

顔を見上げると、そっと指で涙を拭ってくれた。
これ以上ないほど目尻を下げ、優しい顔で。

仁辺(にべ)の奴がふざけて、アイスコーヒーを奏衣のあたまの上にぶちまけたとき、奏衣は笑って許してしまった。
あのとき、ああ、いい子だなって思ったんだ。
それから、目が離せなくなった」
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