Please eat me.~チョコレートは私~
あった、そんなこと。
手に買ってきたアイスコーヒーのカップを持っているのに、他の社員とふざけていた仁辺さんが躓いて、結果、私のあたまにぶちまけた。
ふざけていた仁辺さんも悪いが、責めたところでなにか変わるわけじゃない。
彼もあやまってくれたし。
そのせいか翌日、熱が出たんだけど。

「俺がちゃんと言わないから、奏衣を不安にさせていたんだな。
ごめん」

ぎゅっと、八杉課長からさらに強く抱き締められた。
バニラの香りが強くなる。
八杉部長の、夜の香り。
それは甘い声と共に私を酔わせていく。

「俺は奏衣が好きだよ、愛していると言っていい」

課長の手が私の頬に触れ、親指が唇をなどる。
眼鏡の向こうの瞳は、蠱惑的に濡れて光っていた。

「奏衣……」

少し掠れた声が私の鼓膜を揺らす。
ゆっくりと重なった唇。
あごにかかった親指が私の口を開かせ、ぬるりと舌が入ってきた。

「……ん……ふっ……」
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