年下の男
 付き合う男は年上が多い。そういえば以前お客に本気になって関係がぐだぐだになってしまったことがある。向こうは仕事をやめろと言うし、でも結婚を考えてるわけでもなかった。何かもっと違う仕事を、と言う彼とはよく喧嘩になった。店に来てオーナーに文句を言って、幻滅した。なかなか終わらない口論にオーナーは普段通りの調子で、仕返しにサクラが貴方の会社に行って『この男が私と結婚してくれない』って喚いたらどうかな?と言うと、彼は無言のまま返った。それでも私は彼のことを好きだった。
 いくら女の水商売は色気を売るだけじゃない、と言っても、まんまとお客に落とされた私に勝ち目があるわけじゃなかった。最後は彼の奥さんに関係がバレて、もう二度と関わらないように念書を書かされた。そんなの知らなかったのに、ばかみたいだった。

 オーナーとはたまに仕事終わりに飲みに行くくらいだった。店の女には手を出さない、という信条を知っていたのに、酔っ払った頭でどんな言い訳を考えても本能には敵わなかった。それ以来、オーナーと飲みに行く機会は増え、今や従業員公認の仲。でも付き合ってるわけじゃなく、そういった約束もしないままだらだらと続いている。

『サクラに好きな人ができたら教えてね』

腕枕の中で感じる優しさは、なんだか居心地が悪かった。
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