もう一度あなたに恋をする
「滝沢さん、久瀬さんって何時ごろ戻ってきます?」

なかなか戻らない久瀬をチームのメンバーが気にしている。午後からの予定があるから。

「わるい、久瀬は今日戻ってこれないんだ。さっき連絡があった。悪いが久瀬抜きで午後の予定組んでくれるか?俺も手伝うから。」

「そうなんですか?」

「ごめん、バタバタして伝えるの忘れてた。」

今は詳しい状況がわからない。九条さんの事を伝えれば皆の仕事にも影響が出そうだから今は黙っていた方がいいだろう。


午後は来週から復帰予定だった九条さんの仕事の割り振りや久瀬の仕事をこなした。
やっと久瀬から連絡が入ったのは3時過ぎ。

『わるい連絡が遅くなって。』

「それはいい。九条さんは?」

朝の電話と違って久瀬は落ち着いている感じだ。

『手術は無事に終わったよ。さっき親御さんも到着して一緒に先生から話も聞いてきた。』

「それで?」

『目を覚まさないと何とも言えないが、後遺症が残るかもしれないって。それと・・・記憶障害も出る場合があるらしい。』

「それって記憶を無くすってことか?」

『ああ、全部かもしれないし一部かもしれない。目を覚まさないと影響がどれだけ出てるか分からないそうだ。』

「佑?」

電話がかかってきた時はいつもの久瀬に戻っていると思ったが、気を張っているだけなんだろう。俺も一緒に病院にいてやりたいが久瀬がなるべく九条さんに付いていられるよう社内の方を俺が何とかしなければ。

「佑、こっちは気にするな。俺がいるから大丈夫だ。九条さんの目が覚めるまで傍にいろ。」

「すまない、ありがとう。」



直ぐ社長に佑から連絡があった事を伝えた。

「そうか・・。」

九条さんを東京に呼んだ人。色々と思う事もあるのだろう。

「来週から九条さんは復帰予定でしたのでチームのメンバーには黙っておくことはムリだと思います。仕事の割り振りもありますし。後で伝えようかと思うのですがよろしいですか?」

「そうだね。かなり皆動揺すると思うからフォロー頼むよ。」

「はい。」
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