いちご



「おい瑠衣斗」


「…え!?俺!?」



当然、続けて私に掛けられると思っていた言葉はなく、あっけなく瑠衣斗に向けられた。



瑠衣斗が驚くのも無理ない。



じっと瑠衣斗を見る慶兄に、瑠衣斗は「な…何だよ」と躊躇したように聞いた。


背は慶兄の方が少し低いようだ。


「お前たまには家に電話しろ!!」


「ええ~!?んな事かよ!!」



ツカツカと瑠衣斗の前まで行くと、ぺしっと慶兄が瑠衣斗の頭を叩いた。



「たまには帰れるよなあ」


「…帰れる」


「よろしい」



糸を張ったような空気が、和んだ。


慶兄が変えてくれたのが分かった。私の事情を知っている慶兄は、気を配って話題を変えてくれたのだろう。



「るぅちゃんから実家に帰ったって話めったに聞かない」



うんうん。と隣で俊ちゃんが頷いている。


確かに、滅多に実家には帰ってないんだろう。聞いても「一日泊まっただけ」で終わらせてしまう。


慶兄が話を逸らしてくれたので、少しほっとした。



みんながいる手前、心配をこれ以上かけたくない。



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