いちご
さっきまでの瑠衣斗の何とも言えない表情は、何を言っていたんだろう。
考えても、私には分からなかった。
ただ、本当に驚いていたみたいだし、そう感じただけだよ。
そして、私には、もう一つ疑問に思っていた事があった。
「…るぅ、昨日さ…何で私の事探してたの?」
みんなを総動員させてまで、何かあったんじゃないかとも思っていた。
「え?あー……」
なかなか返って来ない返事に、焦らされるように気持ちが先走ってしまう。
「みんなに連絡してまで…大事な用とかあった?」
「いや…ん~…。謝りたくて」
言われた言葉の意味が分からず、瑠衣斗を見上げた。
今日さっき会った時から気付いてはいたが、瑠衣斗は何だか疲れたような顔をしている。
「謝る…?意味が全く分かんないんだけど」
寝てないのかな…?どうしたんだろう。
「俺のせいで…何か嫌な思いさせたと思って」
「………へ」
多分、“りな”さんの事を言っているのだろう。
瑠衣斗の一言で、今までの“りな”さんの言葉が蘇るように、胸がざわつく。
昨日の二人のキスが、瞼の裏に、頭の中にしっかり焼き付いている。
「気にしてない。それに、るぅが謝る事じゃな……ひょっとして付き合う事になったとか!?」
だから彼氏として彼女の事をかばって謝ってるの?
「……ちげーよアホ。付き合う訳ねぇ」
呆れたように言う瑠衣斗に、ホッとする自分がいる。
そしてそんな自分が、また嫌になる。
慶兄は…こんな私を好きでいられるの………?